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シノニア

ガイア連邦共和国の自治区のひとつ。ユーラシア大陸の東部と南東部、及び周辺海域の島々を版図とする。また、ミクロネシアの島々に広がるムースウエスト準自治区(首都:パシフィカ市)が所属しているが、同区は628年の大水害によって壊滅状態となり、住民はちらほらと戻りつつあるものの、640年現在も復興には至っていない(準自治区は制度としては自治区の下に置かれるが、実際にはほぼ独立した行政単位)。

ユーラシア大陸はガイア連邦の建国時点ではひとつの自治区であったが、幾度かの内戦を経て分割され、現在の形に落ち着いた。歴史的経緯もあってか、トッカルやエウロとはやや距離を置いている。一方、ベリスとの関係は良好である。

自治区首都はシノニアシティ。その他の主要都市としては、ベリスとの玄関口となるヤンゴンシティ、ユーラシア大陸とニッポン列島の交通の要衝であるフクオカシティ、南の玄関口であるバンジャルマシン市、トッカルとの交易が盛んな港町オタル市などがある。経済的に豊かな自治区であるので、他にも多数の都市が栄えている。

強大な工業生産力を誇り、世界で使われる精密機器のほとんどを製造している他、様々な産業が盛んである。主要な生産地には、フクオカシティ、ティペ市、ソール市などがある。トシムラテックやトーツーなどのように本社をシノニアに置く企業の他、エルマーエナジープラント社(本社ネオポリス)や、ペトロケミカル工業(本社モスクワ)など、生産拠点をシノニアに展開する企業も多い。

トーキョー市には大規模な常温核融合発電施設が置かれ、世界の電力の大半を生産していたが、老朽化による一部施設の運用停止(この時代、常温核融合炉は安定稼働に入ってからかなりの年月を経過しており、根幹部分をメンテナンスできる技術者が存在しない)などにより、640年時点では発電量が減少している。

全自治区中随一の人口を抱えるが、これら人口は沿岸部を中心に分布しており、内陸部の人口密度は比較的低い。ケープからの難民や、古くはタウラビアやコルンからの難民も広く受け入れてきたことも特徴のひとつであり、現地住民との混血もかなり進んでいる。現在も人口の三分の一ほどはモンゴロイド系が占めるが、例えば旅行者などの目にはどちらかといえばマイノリティに映るであろう。ただし人種的な差別はない。住人のほぼすべてがガイア連邦の公用語である英語と、伝統的な地域言語のバイリンガルである。

混血が当たり前になっている一方で、街並みは比較的良く保存されている。西暦代以来の東洋的な文化が色濃く残っており、独特な雰囲気から観光地としても人気が高い。

住民は平均して高い生活レベルにある。食料生産の多くはガイア連邦の食料プラントに依るものではあるが、海洋資源が豊富なことから、独自の海洋事業も盛んに行われている。また、温暖で水の豊富な土地柄から、伝統的な農業生産も細々とながら行われている。このため食料プラントによる生産品は近年ではやや余剰傾向にあり、自治区政府はそれらを備蓄に回す一方、保存の難しいものは食糧事情の悪いエウロへ支援物資として輸出している──余談であるが、ここでいう支援とは無償ではなく有償支援である。いわば超格安販売なのだが、シノニアは食料支援と同時にエウロに対する借款の引き受けも行っているので、少なくとも食料を引き渡す際には代金を受け取っていない。ただし、もちろんそれら代金はエウロのシノニアに対する債務として計上され続けており、単利とはいえ利子も付く。エウロから見れば一種の泥沼である。

自治区の政治形態としては議院内閣制を採用している。また、シノニアにおいて連邦評議会は自治区間の利害調整機関と見なされており、同区からの評議員には自治区政府の意向を反映した人物が選出されるのが通例である(内閣にて指名され、自治区議会で承認される)。

シノニアの行政形態として現在では他に類例を見ないものに、地方行政単位として「市」と「シティ」の2種類が存在する点が挙げられる。ガイア連邦政府において市とシティの扱いに差違は無いが、シノニア自治区内においては、シティは税制その他の面で市よりも優遇されている。

おおまかにいって、シティは市よりも規模の大きな都市である。ただし人口の多い都市が必ずシティとなるかというとそうではない。市がシティに昇格するには、人口・税収などの基本的なハードルをクリアした上で、シノニア自治区政府による承認が必要である(政治的・経済的、あるいは軍事的な重要度などが勘案される)。

シノニアでシティ制度が採用されているのは、他の自治区に比べて数の多い都市群を効率よく統治するためとされている。なおシティ制度はシノニアが元祖ではなく、タウラビア自治区(386年に閉鎖)発祥の制度である。